近代スポーツは、筋トレなどのフィジカルトレーニングをおこなう事が一般的になりましたが、昔からある伝統的スポーツの多くは、筋トレはおこなわず、あくまでその競技の動きで鍛えていく事でパフォーマンスが上がるという考え方も根強く残っています。ゴルフのようなコンタクトスポーツではない競技の場合はなおさらです。しかし、最近では野球の大谷選手のように、高次元で動きの精度とフィジカルの強さを両立させているアスリートもいます。
ここでは、主にゴルフを例にして、パフォーマンスを上げて行く為には、どのような所を意識していくと良いのかについて見ていきます。一般的なスポーツの常識は、果たしてあっているのか、また、筋トレと動きのトレーニングの違いや、果たして両立は出来るのか、なども、一緒に考えていきましょう。
ゴルフのパフォーマンスアップには時に常識を疑う事も大事?
スポーツ毎に、それぞれ体の使い方における常識のようなものが存在します。ゴルフであれば、スイングの際に頭を動かしてはいけない事だったり、野球であれば、バットスイングの脇を開いてはいけない事だったり、ボクシングであればパンチを打つ反対側の手は顔を守る為に上げておかなければいけない事、などがあります。(時代と共にその常識が変わる事もあります)
しかし、一流のアスリートのパフォーマンスをスローモーションで見てみると、意外と頭が動いていたり、脇が開いていたり、ガードの為の手が下がっていたりと、その通りになっていない場合も多いです。
一流選手に限って、基本ができていないなどという事は考えにくいものですが、なぜでしょうか?
一つの理由としては、そのスポーツ競技を追及した結果、そのようになった事が考えられます。
例えば、ボクシングであれば、競技の性質上、攻撃の時でも守りを固めておかなければ、カウンターパンチをもらってしまうリスクがあるのですが、強いパンチを打つ場合、その反対側の肩を後ろに引いたり、または手を下げたりした方がパンチの伸びやキレが増す事があります。攻撃力を最大化させた結果だという事です。また、反対側の手を顔のガードポジションに置いたままでは、次に打ち込みたい反対側の手のパンチの種類が限られてしまいます。アッパーカットやボディへのフックは、一旦ガードを下げた状態にしないと打てないからです。ですので、コンビネーションパンチの選択肢を増やして、相手をかく乱する事が目的で、ガードの手を下げている事も考えられます。
特にゴルフのような、止まったボールを自分のタイミングで打つスポーツであれば、パフォーマンスを考えるなら、動きを腕、脚などの部位毎に別々に捉えるのではなく、身体操作による全身を連動させた結果、頭が動いたり手が下がる事に繋がったのではないでしょうか。ですので、本質的な身体操作の理解がないまま、頭は動かさない、脇は絞る、身体は開かない、などの細部の動きを常識に則って守っていると、逆に体が動かしにくくなってしまう事があります。
体幹部の身体操作の結果が、四肢や頭の動きに繋がる場合は、体幹の動きが整えば、他は全てまとめて動きが良くなる事もありますし、逆に末端の動きから体幹の自然な身体操作がおこる場合もあるので、どちらが良いかはスポーツ毎にそれぞれ違います。一流の選手が基本と違う動きをしているなと感じた場合は、一度今までの常識を忘れてみるのも良いかもしれません。
筋肥大とゴルフのパフォーマンス向上を両立させるトレーニング
いわゆる筋肥大が目的の筋トレは、目的の筋肉に常に負荷をかけ続ける必要がある為、できるだけ反動はつけずに筋肉を収縮させるのが一般的です。(反動は、それ以外の筋肉や反射の力を使ってしまう為、十分に目的の筋肉の負荷がかからなくなってしまいます)また、高い負荷でエキセントリック収縮(筋肉が伸ばされながら力を発揮する)をおこなう事で、筋肉にダメージを与える事も筋肥大に大切です。しかし、これらのやり方は、効果的に目的の筋肉に効かせる事が目的の為、関節の動かす数は限定的になってしまいます。
ですが、ゴルフなどのスポーツのパフォーマンスの向上には、全身の筋肉の連動が不可欠です。反動を使う事は、爆発的な力を発揮する為にとても重要だからです。(ゴルフの場合はクラブがしなる為、反動はつけすぎない方が良い場合もあります。)
また、中には、脱力により、連動性を高めたり、体重の重さを有効利用する事もあります
その為、本来は筋肉の増強(特に筋肥大)と、パフォーマンスの向上のトレーニングは、分けて考えた方が良いです。
しかし、動きの種類によっては、どちらも意識しながらトレーニングすることは可能です。
それは、上に持ち上げるなどの重力に逆らう負荷がかかる動作が主な動きの場合です。
一般的に筋肥大が目的のトレーニングは、反動をつけずに筋収縮できる重さ、スピードでおこない、終始、目的の筋肉に負荷をかけ続けながら反復しますが、パフォーマンスの向上を目的にする場合は、”反動をつけないと動かせられない重さ”でおこなうのが一つの方法です。嫌でも全身の筋肉を使わざるおえない事になります。ただ、重すぎる負荷は実際のスポーツ動作とかけ離れてしまったりするので注意が必要です。また、動きの途中で重さを放り投げてしまったりなど、筋肉から重さを離してしまう動きでは、衝撃を受け止めるエキセントリック収縮の負荷が足らなくなってしまい、筋肉へのダメージが減って筋肥大に繋がりにくくなります。筋肥大で大事なのは、目的の筋肉で負荷を受け止める事であり、動作の終わりで重さを手放さずに、筋肉でブレーキをかけながら元の状態まで戻す事を心掛ければ、効果的にエキセントリック収縮(筋肉が全力で収縮しながらも負荷が高くて筋肉が引き伸ばさせる状態の事)をさせる事ができます。全身の反動を使わないと持ち上げらない高重量を最大のパワーで動かして、それを目的の筋肉でブレーキをかけながら戻す。これらの使い方ができるような種目であれば、筋肉作りとパフォーマンスを良いバランスで両立させる事は可能です。近年、3秒間のエキセントリック収縮でも、筋肥大が起こるとの研究結果も出ています。パフォーマンスを意識し、なおかつ筋肉作りを狙う場合は、このように高重量を全身の連動で動かし、その際に一瞬負荷が抜けたとしても、戻す動作はその高重量の負荷を目的の筋肉でしっかり受け止めるようにしましょう。
ゴルフのパフォーマンス向上と筋収縮の関係性
先日、ある健康情報番組で、握力の大切さについて語られていました。
「様々な病気による死亡リスクと、握力に強い関係があることがわかってきました。握力が弱い人たちは、平均値の人たちより病気による死亡リスクが高くなってしまう」というのです。
しかし、この話しを聞いて早速、握力を鍛えよう!と思われるかもしれませんが、ここで少し考えてみましょう。握力は確かに大切です。
しかし、握力だけを鍛えれば良い訳ではなく、基本的に全身の筋力があるかどうかが健康において大切です。この場合、握力が強い人は基本的に全身の筋力が高い傾向にあり、逆に握力が弱い人は、全身の筋力も低い傾向にあると思われます。
特に握力は、屈曲の筋肉で、同じく屈曲筋の上腕二頭筋や大胸筋、腹直筋、が動きとして繋がりがあるので、握力以外の筋力の強さとも関係があります。
ですので、特別に握力だけを鍛えればいいという訳ではありません。むしろ、屈曲筋を鍛える事で、握力も自然と鍛えられた可能性もあります。(ただ、手を強く握ってから開くと、それだけで血管拡張物質NO(一酸化窒素)が分泌されますので、握力で血管を若く保つ事ができます。)
例えば、ペットボトルを開ける為には最低限の握力が必要です。しかし、この動きでより必要なのは、胸や背中の体幹の筋肉です。ペットボトルの蓋を握って離さない為の筋肉が握力で、直接、開ける動きは繋がりのある胸や背中の筋肉です。握力は蓋を離さない最低限の力で大丈夫という事です。また、ゴルフなどの球技の場合では、握力を使い過ぎると鎖骨や肩甲骨の動きを固めてしまって、連動性を失わせるリスクもあります。
ゴルフに限らず球技全般のパフォーマンスに大きく関係している背中の筋肉の広背筋はどうでしょうか?
ボクシングなどの格闘技でも、広背筋は強いパンチを打つのに大切な筋肉だと言われ。この背中の筋肉は、ヒットマッスルなどとも呼ばれていますが、こちらも先程の握力と同じく、何故発達したのかを考えてみるのも大切です。
広背筋はパンチを打ち出す動作のなかで、伸ばされて使われますが、基本的に筋肉は縮める事で力を発揮します。(筋収縮の強さが筋力の事です)肘が体幹に近づく動作で収縮するのが広背筋ですが、パンチング動作やゴルフなどの球技はその逆で、肘が離れて行く動作です。ですから、広背筋が急激に伸ばされてダメージを負った結果、発達したのではないかと思われます。
筋肉が伸ばされるのいうのは、反対側についている筋肉の収縮の結果です。スムーズに伸ばされた方が筋肉のブレーキが外れてスイング動作などスピードは上がります。
スポーツ動作の中で伸ばされて使う筋肉は、基本的には筋収縮の強さは要りません。むしろ動きの中で、その筋肉がいかに脱力できているかが大事です。
ですので、広背筋を収縮させるトレーニングをすれば、そのままパンチ力が上がったり、球技の飛距離などのパフォーマンスが上がる訳ではありません。(だからと言って、広背筋トレーニングが必要ない訳ではありません。また、パンチを引き戻す際にも広背筋は収縮して使います)
動きを追及した結果、そうなったという事がよくあります。ですので、根本的な動きの理解を深めてくい事がなにより大切です。
○○を食べている人は長生きする?などの健康情報も同じです。○○を食べるような人は、そもそも健康意識が高い人で、○○を食べればそれだけで健康になれるなどと、単純なものではないかもしれません。情報は深く読み解っていきましょう。
まとめ
ここまで、どのような事を意識すると、ゴルフのパフォーマンスアップに繋がるかについて見てきました。
まずは、今までの常識を疑ってみるのも一つの方法です。頭を動かしてはいけない、脇は閉めなければいけない、などの局所的な動きに縛られていると、逆に動きにくくなる事があります。また、意外とトップアスリートもスローモーションで見れば、基本通りやっていない事が多くあります。むしろ常識に縛られることが良くない場合もあるという事です。
また、近代スポーツは筋力トレーニングも一般的になりましたが、昔からあるスポーツは筋トレのデメリットを指摘する事もあります。一方で、野球の大谷選手のように、高次元で動きとフィジカル強化を両立しているアスリートもいます。要するに大事なのはやり方です。それぞれの良さを保ちながら行うには、反動を使わないとできない高重量を全身の力で動かし、衝撃を受け止める際は鍛えたい筋肉を意識する事で、ゴルフにつながる動きをトレーニングしながら、筋肥大にもつながる負荷をかける事も可能になります。そうする事で、よりパフォーマンスの高い動きができるようになってきます。
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この記事を書いた人岐阜市のパーソナルジム・トレーニングスタジオACTION★ [ アクション ]代表トレーナー
渡辺康二

主な資格
- NESTA-PFT(パーソナルフィットネストレーナー)全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会
- ・TRXサスペンショントレーナーインストラクター
- ・加圧トレーニングインストラクター
- パーソナルジムやピラティス、ヨガの経験からオリジナルのストレッチを提案しています。
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