アスリートに必要なのは筋トレじゃない?

アスリートに必要なのは筋トレじゃない?

今も続く筋トレブームですが、トレーニングの目的がボディメイクだけに偏っていると感じます。本来、骨を動かすのがアウターマッスルである表層の筋肉の役割であり、人間が動くために必要なものが筋肉であると言えます。それが、見た目(特に筋肉)の美しさを競い合うボディビル系のトレーニングが、今の筋トレ方法の主流になっています。これらはあくまで筋肉を鍛える事自体を目的にしていて、動きをトレーニングするという意識はありません。しかし、これがアスリートの場合は、筋肉を鍛える事以上に、動き自体を鍛える事が大切になってきます。何故なら、アスリートは筋肉の美しさを競い合っている訳ではなく、高いパフォーマンスを発揮して、競技に勝つ事を目的にしているからです。一件、筋肉を鍛えればパフォーマンスが上がるのでは?と思われがちですが、実際は筋肉の大きさよりも、体重や、神経の発達、動きの連動性などが大きく関係します。では、どのような所を注意してトレーニングした方が良いのか、また、効果的なトレーニングとは何なのはについて、じっくり見ていきましょう。

アスリートは筋トレでパフォーマンスが落ちる事がある

元プロ野球選手のイチローさんは、必要以上に筋トレをしなかった事で有名です。理由としては、身体の感覚が鈍ったり、バランスが崩れて打てなくなるからだそうです。しかし、現在メジャーリーグで大活躍する大谷翔平選手は、ウエイトトレーニングに励み、どんどん身体を大きくしています。同じトップアスリートでも、それぞれ考え方が違うものです。これは、どちらが正しくてどちらが間違っているという話ではありません。言ってみれば、どちらも本人にとっては正解です。大谷選手の場合は、ウエイトトレーニングで身体を大きくする事でパワーが増す事を期待していると思います。スポーツの動きで実際のパワーを上げる為には、体重は重要な要素です。体重×スピードで、基本的なパワーが決まってくるからです。その際、筋肉量での体重増加であれば、筋力も上がっているので身体が重く感じませんが、単に脂肪だけで体重が増えた場合は、動きに切れが無くなってしまいます。ですので、大谷選手は筋肉として体重を増加したいのだと思われます。
プロボクシングの世界では、1階級(2キロ前後)違えばパンチ力が全然違います。軽量級でもハードパンチャーはいますが、ベビー級のボクサーのパンチ力にはパワーでは勝てません。体重が多いと言うことは、それだけ有利になると言うことです。
では、具体的に筋トレのどのような所が弊害になるのでしょうか。
先ず一つに、高重量のトレーニングは、どうしても先ず体幹を安定させる必要がある為、体幹の筋肉が動きとして硬くなりやすいという事です。
次に、高重量のトレーニングはウエイトを降ろす動作でブレーキをかける必要があるので、動作の間は筋肉の緊張を抜く事が出来ません。それによって、いざ実際の動きでも、必要以上に筋肉に力が入ってしまって動作が遅くなる可能性があります。
筋肉には、その動作でアクセルの役割の筋肉と、ブレーキの役割の筋肉があり、高重量のトレーニングは負荷の高さから、両方の筋肉が同時に働いてしまいます。それは、アクセルを踏みながらブレーキを踏んでいるような状態です。
また、上半身のトレーニングとして、腕の筋肉や肩の筋肉を鍛えると、鎖骨や肩甲骨の動きが固まり、スポーツ動作でも腕や肩に頼った身体の使い方になってしまい易いというデメリットもあります。(スポーツの種類にもよりますが、球技などでは下半身で生み出したエネルギーを、体幹を通して腕に伝える事が大切です。腕は道具として使うだけで、むしろ、余分な力を入れないでムチのようにしならせて使う事が多いです。)
そして、もう一つ大事な事として、高重量トレーニングでは骨盤を安定させる必要がある為、実際の動きのような骨盤の高速移動や高速回転が出来ません。球技のボールを投げたり打ったりなどの動きや、格闘技のパンチやキックなどの動きは、骨盤を高速で回転させます。このような骨盤の移動こそが、スポーツ動作で言う所の、体重を乗せる動きです。


アスリートに必要な、筋トレとは別の動きのトレーニング

イチローさんは、特に筋トレの中でも単関節トレーニングのように、筋肉をパーツごとに鍛える方法を否定していました。身体のバランスが崩れてケガをしやすくなってしまうと思っていたようです。その証拠に、現役中は一般的なウエイトトレーニングはしなくても、初動で負荷がかかるトレーニングマシンは継続して使っていました。トップアスリートを目指すような人は、筋トレの弊害についても理解しておきたいですが、一般的には筋トレには数多くのメリットが存在します。大事なのは、パフォーマンスアップの為のトレーニングと、一般的な健康維持の為、または体を大きくする目的のトレーニングではやり方が違うということです。では、パフォーマンスを上げるためには、どのようなトレーニングをおこなえば良いのでしょうか?
先ず大事になるのが、筋肉を鍛えるという気持ちを捨てるという事です。効率の良い動きを見つける為には、筋肉に効かせてはいけません。いかに楽に動作がおこなえるかを考える事が大事です。また、体のどの部分に意識を置くかでも動きは変わってきます。例えばバランスが必要な動きの場合、視覚情報に頼り過ぎると、自身の頭部や視線の先に意識がいってしまいますが、人間の重さの中心は骨盤辺りにある為、骨盤を繊細に動かしてバランスを取る必要があります。頭部や視線の先に意識があり過ぎてはいけません。この場合、意識を骨盤近くに置いておく必要があります。
その為には、一点を集中して見るよりも、全体をぼやっととらえることで視覚に頼らなくなり、骨盤に意識を置きやすくなります。また、動作中は、頭で考え過ぎるのも同じ理由で良くありません。考えるより体で”感じる”事が大切です。逆に、自ら動く際は、不安定を利用して、重さの軽い部位である手先や、頭部などから動かすのもスムーズな体重移動に繋がります。
意識の置く場所をいろいろと変えて、動きの違いを感じてみるのも効果的です。
また、余分な筋肉のブレーキを外す事も大切です。例えば、肩に力が入っていれば肩甲骨が固まる為、胸や背中の筋肉の動きが悪くなり、一緒に連動して動く骨盤の動きも妨げてしまいます。不必要な筋肉に力が入ると動作にブレーキをかけてしまう事になります。楽にできる動作を追求することでブレーキを外していく事ができます。スムーズな筋肉の伸長は、スポーツ動作に不可欠な伸張反射を効果的に利用する事にも繋がります。是非いろいろ試してみましょう。


アスリートのパフォーマンスを妨げる筋トレメニュー

アスリートが筋トレをおこなう場合には、気を付けなければならないことがあります。
パフォーマンスの向上が目的なら、筋肉はただ闇雲に鍛えてはいけません。むしろ害になる事もあります。先ず大前提として、ボディビルダーは筋量を増やす事を目的にトレーニングを行いますが、アスリートの場合は、その競技のパフォーマンスを上げる事を目的にしています。ですので、アスリートはボディビルダーのトレーニングをそのままそっくり真似してはいけません。
でも、鍛えておくに越したことは無いんじゃないの?と思われる人もいるかもしれないですが、少し違います。また、その競技に必要な筋肉だけを鍛えれば良い訳でもありません。何事もバランスが大事です。それをふまえて、先ず、トレーニングの際、注意したいのが単関節のトレーニングです。
反動を使って複数の関節を動かしたりせず、一つの関節だけを動かして、目的の筋肉だけを効率よく鍛えるのですが、スポーツ動作というのは基本的に全身の反動を使うものです。ここで変は癖が付いてしまうと、神経回路が混乱して動き自体が硬くなってしまいます。複合関節トレーニングの場合でも少し注意が必要です。例えば、屈曲と伸展が合わさったようなトレーニングです。
屈曲とは、縮める動作で(お腹を丸める、肘を曲げる、ひざを曲げる、等)伸展は伸ばす動作の事ですが(腰を反る、腕を後ろに振る、脚を後ろに振る、等)筋肉はすべてに繋がりがある為、基本的に屈曲筋どうしに繋がりがあり、引っ張られて同時に収縮します。伸展の場合も同様な事が起こります。
これらの筋肉の繋がりからくる連動を感じる事が出来ると、よりスムーズに、より強い力が出ます。逆に、これをあべこべに動かしてしまうと、動きにブレーキがかかる為、スピードが落ちてしまいます。筋収縮のスピードが筋パワーなので、当然発揮できる力も落ちてしまいます。
例えば、ベンチプレスの際に、ベンチの上で反った状態を保ちながらバーベルを持ち上げた場合、大胸筋はストレッチされたまま、肘を伸展した事になります。
ベンチプレスを”押す”力の強化としてとらえた場合、バーベルの上げる動作で、胸の筋肉を収縮させる事が大切です。
ですが、一般的には、高重量であるがゆえに体幹をしっかり固めておく必要がある為、最初から最後まで胸をストレッチさせたまま(肩甲骨を寄せたまま)おこなうのが一般的です。
しかし、それでは、バーベルを持ち上げる際の胸の収縮が十分ではありません。骨盤の後傾や肩甲骨の外転が十分におこなわれてこそ、(前鋸筋の収縮も加わり)胸の筋肉は最大の力を発揮します。
また、腕は本来肩甲骨から(もしくは鎖骨から)始まっているので、腕を前方に遠くまで伸ばせば、自然と肩甲骨が外転していきます。体の自然な連動から考えると肩甲骨を寄せたまま腕を遠くまで伸ばすのは不自然な動きです。(バーベルを、肩甲骨の外転が無いまま押し上げると肩の筋肉にも過剰にストレスがかかってしまいます)

また、胸の筋肉は、同じく屈曲筋の上腕二頭筋(力こぶ)と連動するのですが、胸のストレッチポジション(伸展動作)のまま持ち上げるベンチプレスは、バーベルを持ち上げる際に肘を伸ばす筋肉(上腕三頭筋は伸展の筋肉)意識が強く働く為、一番強い収縮を感じるのが大胸筋より上腕三頭筋になってしまう事があります。これは屈曲筋と伸展筋を同時に収縮せてしまっているからこそ起こる事です。ですので、重すぎる重量は骨盤を動かしにくくし、自然な筋肉の連動が感じれなくなってしまう恐れがあるトレーニングだと言えます。決して筋トレ自体が問題ではなく、トレーニングの種目や重量の問題です。昔の武道家、武術家が、いわゆるウエイトトレーニングをしない人が多いのは、筋トレの中に不自然な関節の動きのものがある、この辺りに理解しているという理由があるのかも知れません。フィジカルの面では、はるかに昔よりも今のアスリートは優れています。ですがパフォーマンスを上げるには神経や感覚と筋肉、それぞれのバランスが大切です。


まとめ

ここまで、アスリートが気を付けておきたい筋トレの特徴について見てきました。
まず、何故筋トレがパフォーマンスの妨げになる可能性があるかを考えておく事が大事です。
一つに、高重量のウエイトを扱うと、体幹部は必要以上に固めてしまう事があります。それでは骨盤の動きだけでなく、肩甲骨の動きも出ません。腕は肩甲骨((厳密には鎖骨)から始まっていて、ここから動かす事で胸や背中の筋肉が大きく動きますが、肩甲骨が動かなければ肩関節の筋肉に過剰な負荷がかかります。また全身の連動性も骨盤、股関節、肩甲骨のスムーズな動きが不可欠です。また、筋肉の力みによって、本来必要のない、その動きのブレーキになってしまう筋肉にも力が入ってしまいます。それではアクセルを踏みながら、ブレーキを踏んでいるようなものです。それでは動きのスピードを落としてしまいます。
パフォーマンス向上を考えるのであれば、トレーニングの際に、筋肉を鍛える事を考えず、動き自体をトレーニングする意識でおこなう事が大切です。その為には、筋肉の繋がりを正しく理解しておくことも大事です。動きにおける主動筋はどこなのか、その筋肉と繋がりのある筋肉はどれで、邪魔をする筋肉はどれなのか、ここを明確にしながらトレーニングすることでパフォーマンスが向上していきます。パフォーマンは筋肉の大きさで決まる訳ではありません。大切なのは、体重と神経、身体の連動した動きです。この辺りを意識しながら、質の高いトレーニングをしていきましょう。岐阜市のパーソナルジム、トレーニングスタジオACTION★では、日々のあなたの頑張りのサポートをさせて頂いております。

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この記事を書いた人岐阜市のパーソナルジム・トレーニングスタジオACTION★ [ アクション ]代表トレーナー

渡辺康二

主な資格

  • NESTA-PFT(パーソナルフィットネストレーナー)全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会
  • ・TRXサスペンショントレーナーインストラクター
  • ・加圧トレーニングインストラクター
  • パーソナルジムやピラティス、ヨガの経験からオリジナルのストレッチを提案しています。

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